海之まりん的日常

カタコンベ


神山 裕右 / 講談社

2004年 第50回江戸川乱歩賞受賞作
新潟のマイコミ平地下で大規模な鍾乳洞が発見された。
大学院で古生物学を研究している弥生は、その鍾乳洞で幻のニホンオオカミらしい動物が生息しているらしいという噂を聞き、研究室の助教授、柳原と共にその鍾乳洞の調査に参加する。マイコミ平は、その昔、ケイブダイバーであった弥生の父が行方不明となった場所でもあった。何か因縁めいたものを感じながら調査にあたる弥生だったが、折りしもの悪天候により、洞窟は水没の危機にさらされる。
そのころ、弥生たちの危険を知って、ひとり、洞窟へと救出に向かう男がいた。男の名前は東馬亮。東馬は、かつて、このマイコミ平で弥生の父を見殺しにしたという過去を持っていた……。

新聞の書評に、ケイビング(つまり、洞窟探検ね)の経験がない作者が書いているとは思えない臨場感、みたいなことが書いてあって、それを見て、読んでみたいと思っていた一冊でした。
洞窟探検。なんだか、それだけでドキドキします。地球上にも、人類の知らないナゾがまだまだたくさんあるんだって思い出させてくれる言葉です。
というわけで、洞窟探検、ドキドキしました。
確かに、ドキドキしたのですが……。
あー……。
なんというか、それ以外の部分は、大変粗い印象の一冊でもありました。
まず、文章が粗い。
文章と文章のつなぎに困った場所だったのか、周囲と比べて明らかに粗雑な一文がところどころ目立ちます。
中には、短い一文の中に同じ単語が繰り返されている箇所などあって、こういうところは、普通だったら、編集さんや校正さんから確実に指摘が入るはず。
もしかしたら、江戸川乱歩賞は投稿作に手を入れないで(明らかな誤字脱字は別としても)そのまま本にしているのかなぁ、なんて思ってしまいました(実際はどうなの? ただの校正ミス?)。
また、ストーリー構成も粗い。
細かい部分での描写で「あれ?」と思わせるような、よく意味のわからない部分があるのは、まあ、許すとしても、これでは犯人の動機があまりにも弱いでしょ。
ここは、もう少し、知恵を絞ってほしいというか、絞らなきゃならない部分だったと思います。
一番気になるのが、とにかく、登場人物が多く、視点がころころ変わるのが読みにくいこと。もちろん、視点が変わってもうまく処理していらっしゃる作家さんもいらっしゃるので、結局は、その登場人物をうまくさばけていないということなのかもしれません。
東馬、霧崎あたり、せっかくカッコいいキャラなのに、そのカッコよさが今一つ生きてこないのは、視点がバラけたせいもあるでしょう。
プロローグの遭難のシーンとか、救助隊の人や刑事さんの登場シーンは削り、せいぜい、弥生と東馬の視点に絞って、なるべく洞窟内の出来事でストーリーを進めていくようにしたら、もっと、すっきりとしただろうし、ケイビングのわくわく感というこのお話の一番の魅力を生かせたのではないでしょうか。
時折はさまれる、顔の見えない犯人の思わせぶりな描写も邪魔。
たぶん、こういう構成って、小説というよりは、映画や二時間ドラマのスタイルなのではないかという気がします。
映画やドラマでこういう構成が効果的なのは、画像があるから。ヴィジュアルは文章では真似のできないほどの大量のイメージ・データを一瞬のうちに伝えることができます。
情報量は少ないけれど、その分、ピンポイントで明確な情報を伝えることができるのが文章。この作品の場合では、逆に、読者に与える情報量を絞り、「この先、どうなるんだろう?」と読者をドキドキさせたほうがよかったのでは??? 文章でしか読者に与えることができない面白さ、楽しさ、を、もう少し味わわせてもらいたい気もしました。
うーん。『最年少受賞』なんていう話題性がないとやっていけないところまで江戸川乱歩賞もきちゃってるのかな、なんて気もしないのではないのですが……、これは意地悪過ぎる見方ですかね。
洞窟でのパニック・シーンはドキドキできますし、東馬と霧崎をもう少しカッコよく描くことができたら(魅力的なヒーローはエンターティンメントには不可欠)、もっと、もっと、楽しめる一冊になっていたんじゃないかと思います。
そういう意味で、かなり惜しい一冊でした。
お若い作者さんですし、次回作、がんばってほしいです。
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by marine-umino | 2005-09-16 16:46 | 最近読んだ本
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