海之まりん的日常

江戸川乱歩全集3(つづき2)

『孤島の鬼』に同時収録されてたものです。

『芋虫』
時子の夫は、戦争で両手両足を失いながらも、奇蹟の生還を遂げた。しかし、その顔は、醜くただれ、しゃべることさえままならないありさま。時子は、妻として、献身的にそんな夫の介護を続けるが、しかし……。

昔、『ジョニーは戦場へ行った』という映画がありました。やっぱり、戦争で両手両足も顔も失ってしまった兵士のお話です。
あれは、両手両足を失い、ただ、死んでいないだけの存在となったと思われていたジョニーが、実は、人間としての知性を残していて、意識だけはあるのに、動けない、見えない、話せない世界で生かされていく恐怖と、また、そんなジョニーを人間として扱おうとしない人たちのおそろしさを描いてお話だったように思います。
小学生くらいの時に見たと思うのですが、ものすごーく怖かった……。
しかし、この『芋虫』は、そういう怖さとは、ちょっとベクトルの違うところにテーマがあるような気がします。
身体は不自由になってもエロスは残るというあたり、逆に、人間って、けっこうたくましいもんだよな、とも思えたりして。
時子は、身体の不自由になった夫を性的な対象として見ている自分を、『夫を虐待している』と捉えていたようですけど、それも、愛情ゆえだったのかもしれません。
夫が、最後に『ユルス』と残したのも、だからなのかも。
しかし、『許す』。簡単なようでいて、なかなか言えない言葉ですよね。わかっていても納得できないことは多いし、また、納得できても許せないってことだってある。
この三文字にこめられたせつなさが、胸に痛い一作でした。

『蜘蛛男』

法医学者で、学会にも知られた犯罪学の権威である畔柳(くろやなぎ)博士は、里見絹枝という若い女性から、彼女の妹・芳枝が失踪したので調べてほしいという相談を受ける。
だが、すでに、芳枝は、バラバラに切断された上に、遺体に石膏を塗られ、石膏像として学校に寄贈されるという、悲惨な最期を遂げていた。
畔柳博士は、助手の野崎三郎(24歳。美青年!)と共に捜査を開始するが、絹枝までが惨殺されてしまう。
犯人である『蜘蛛男』は、次は、女優の富士洋子を殺すと予告し、なおかつ、彼が49人の女性の殺害をくわだてていることまでが明らかになる。
追う畔柳教授。逃げる蜘蛛男。
そんな折、インドからあの男・明智小五郎が帰ってきた!

冒頭部分は、蜘蛛男が里見芳枝を殺害するシーンが克明に記されていたりして、ちょっと変わった構成のお話といえば、お話ですかね。
明智くんも、お話が半分終わったところで、いきなり出てくるし。
まあ、明智くんが出てくるころには、犯人は「ああ、この人ね」っていう目星がついちゃってますので、それで名探偵登場とあいなったのかもしれません。
このお話以降、明智くん大活躍するようになるらしいです。なので、小林少年もいないのでありました。ちっ(←おいおい)。
とはいえ、明智小五郎、やっぱり、カッコいいです。文字だけでも、なんかオーラが違います(笑)。
後半の蜘蛛男とのだましあいは、見ものですよー。
でも、どうせなら、明智くんの、こういうカッコいいところ、途中からじゃなく、最初から見たかったな。うん。
まりん的には、明智小五郎ではなく、野崎くんが見習い探偵として事件を解決する、でもよかったんじゃないかと思うんですけどね。
野崎くん、せっかく、美青年なのにー。
いや、走る車の後部にしがみつき犯人を尾行する、なんていうアクションシーンも披露してくれたりしてまして、それなりに見せ場もあるんですけど、全体として、ちょっとヘタレっぽい野崎くんなのでありますよ。
役回りとしては、ちょっときれいどころを添えてみましたってカンジ。
もしかして、このお話のヒロインは、野崎くん、きみだったのか?(いや、ほんとなら女優の富士洋子がそうなりそうなもんなんだけど、彼女、影薄かったし)
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by marine-umino | 2004-10-14 14:04 | 最近読んだ本
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