海之まりん的日常

カテゴリ:最近読んだ本( 21 )

黄泉津比良坂、暗夜行路

黄泉津比良坂、暗夜行路
藤木 稟 / 徳間書店

この本、『よもつひらさか、あんやのみちゆき』と読むらしいです。
あらすじは……。

沙々羅は女学校の教師。
忌まわしい事件により家族を失い、親戚に引き取られ健やかに成長したが、再び、惨劇の起こった館へと戻ることとなる。
沙々羅の生家は、奈良県の山中に、古より続く旧家・天守家。
沙々羅が帰るのを待ちわびていたかのように、天守家では、鳴るはずのない『不鳴鐘』が鳴り響き、次々と殺人事件が起こる。
困惑した、天守家の執事・十和助は東京から探偵を呼び寄せた。
探偵の名は、朱雀十五。
盲目にして白皙の美青年探偵・朱雀十五が、助手の律子と共に、天守家の謎に挑む。

というところでしょうか。

しまったことに、これ、『黄泉津比良坂、血祭りの館』というのの続編でした。
知らないで後編から読んじゃったよ……。
たぶん、前回の事件と今回の事件は一応独立している印象でしたので、何がなんだか全くわかんないということはなかったと思いますが、やはり、キャラクターの把握は今ひとつしにくかったみたい。
特に、朱雀十五。
せっかくの、性格の悪い美青年だったのにー。しかも、吉原の裏社会を牛耳っているとかいうおいしい設定なのにー。
これ一冊だけ読むと、その魅力があんまり伝わってこないんですよねー。
この作者の方が書かれたほかの本を読んだことがないため、前作で、十五の魅力はたっぷり語り尽くしたので作者の方が控えられたのか、それとも、元々こういうキャラクターの描き方をされる方なのかはよくわからないのですが、すんごいもったいないことをしてしまった気分でした。
どうやら、十五の助手役の律子も別のお話で事件を起こしているようですし、ちゃんと把握するためには、シリーズを全作読み込むしかないってことなのかもしれません。
お話のほうは、いわゆる館モノとかいうタイプのお話だそうで、禍々しい仕掛けをたくさん施された洋館の中で、どんどん殺人事件が起こって、死体が量産されていきます。
館の不思議な造り、不鳴鐘、モーツァルトの魔笛、天守家の謎、など、オカルトの香り漂うガジェットがこれでもかと詰め込まれた一作で、こういう仕掛け大好きな方にはたまらないのではないかと思いますが……。
まりん的には……、あー、なんと申しましょうか、この豪華絢爛かつ精緻な舞台設定だけで、もうお腹いっぱいというカンジ。
細かい設定を追うのに頭を使ってしまって、肝心の人間関係や人の心の綾の部分を類推する余裕が残らず、ストーリーを心行くまで楽しむことができなかったような気がします。
これって、やっぱ、あたしがアタマ悪いってことなんですかね(涙)。
ま、まりんのアタマのことはともかく、レトロでおどろおどろしい雰囲気が好きで、設定マニアの方にはおすすめできる一冊ではないかと思いました。
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by marine-umino | 2006-01-09 17:45 | 最近読んだ本

13階段

13階段
高野 和明 / 講談社

傷害致死により二年間の服役を終え仮出所した三上純一は、刑務官の南郷からある仕事の手伝いをしないかと誘われる。
その仕事とは、死刑囚、樹原亮の冤罪を証明し、彼を救い出すこと。
自分が起こした事件の損害賠償で家族が困窮していることに心を痛めていた純一は、莫大な報酬を得られることを知り、戸惑いながらも南郷の申し出を受け入れる。
ふたりが向かったのは、千葉県中湊郡。
だが、樹原亮が殺人事件を犯したという10年前のまさにその日、純一も中湊にいたのである……。

っちゅーカンジのお話。
元々は脚本家でいらっしゃるそうなので書き慣れていらっしゃるせいか大変読みやすいですし、樹原亮の事件と純一の事件が巧妙に入り組んで、最後には一つの結末へと収束していくその手際に拍手です。
また、刑務所内や死刑のシーンなどの臨場感もすばらしく、取材力にも優れた作者さんだと感じました。
一部、ちょっとできすぎかなー、と思う箇所もないのではないのですが、スルーしてもいいよ、って気分になっちゃうのは、たぶん、軽妙な語り口に乗せられてしまうせいでしょう。
作者の方は、たくさん読者を楽しませたいと思っていらっしゃるのかもしれませんね。
それは、『職人で結構』という岡本喜八監督の言葉を引用していらっしゃるところからも推測できます。
法の名の下に人の生命を奪った自分を許せずにいる南郷と、自身が犯した殺人事件に罪悪感をいだきながらも、その罪悪感のベクトルに揺れる純一。
この年齢の違うふたりの男の心が微妙に交錯する中で、人が人を裁くことの重さ、難しさなども考えさせてくれる、大変面白い一冊です。
この作者の方が書かれたほかのお話も読んでみたくなりました。
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by marine-umino | 2006-01-04 14:12 | 最近読んだ本

九月が永遠に続けば

九月が永遠に続けば
沼田 まほかる / 新潮社

第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品。
あらすじは……。
40代の主婦『私』は、夫と離婚し、18歳の息子・文彦とふたり暮らし。元夫の再婚相手・亜沙実の娘・冬子のボーイフレンド・犀田と密会を続けている。
ある日、文彦が突然失踪した。続けて、犀田が謎の事故死を遂げる。
文彦の失踪が犀田の死と関係があるのではないかと思った『私』は、必死に文彦を探し続けるが……。

なんか、腑に落ちない一作でした。
特に、文彦の失踪の理由が。
この展開はちょっと唐突過ぎるような気がするんですよね。
たぶん、作者の方は読者を驚かせたくて最後までこの展開を予想できないよう文章を書かれたのでしょうが、伏線もなんにもなくいきなりたどりついた結果だったので、逆に、肩透かしをくらったような気になりました。
エロティシズムを追求したわけでもなく、かといって、エロティシズムに翻弄される人間の狂気を描いているとも言えない。じゃあ、ミステリとしてどうかというと、謎解きというほどのものもない。
亜沙実が魔性の女なのはともかく、彼女自身がその魔性を疎んじているのか、それとも、彼女の魂そのものが魔性だったのか、よくわからなかったし、冬子ちゃんの扱いも、あれでは、あまりにもかわいそう。
結局、魔性の女に振り回される男のバカさかげんだけが印象に残ってしまう一冊でした。
あと、これ、ホラーサスペンス大賞受賞作らしいのですが、全然ホラーではありません。
ただ、無力な『私』が現実に流されていくお話、かなぁ。
とりあえず、最後にほんの少しだけ救いがあったことにはほっとしました。
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by marine-umino | 2006-01-03 19:35 | 最近読んだ本

骨髄ドナーに選ばれちゃいました

骨髄ドナーに選ばれちゃいました
石野 鉄 / 小学館
電車男があちこちで話題ですが(といっても、当の2ちゃんの人たちの間では、既に過ぎ去った遠い過去の物語なんだろうなぁ)、この本も2ちゃんのスレから生まれた一冊。
たった一つしかスレ立ってないし、そのスレも600しか書き込みがないのに、こんなの本にするのかよ、なんて言ってる人もありましたが、まあ、これは電車男とは全く違ったアプローチの本でしょう。
話題になったから本にした、というよりは、わかりやすいから本にした、という感じ? 少し変則のマニュアル本という印象でした。

鉄さんは、幼なじみが白血病で亡くなったことをきっかけに、深く考えもせず骨髄バンクに登録しました。そんな鉄さんのところに、ある日、骨髄バンクからドナーに選ばれましたというお知らせがやってきます。
登録はしたものの、まさか、自分に声がかかるとは思ってもみなかった鉄さんは戸惑い、2ちゃんにスレを立てたのでありました。
この鉄さんによる、ドナー体験記と、鉄さん以外のドナー経験者、医療関係者、ドナー登録を考えている人たちによるレスが、そのまま本書の内容となっています。
鉄さん自身が経験なさったことをそのまま書いていらっしゃるので、ドナーになると、どういうことをしなくてはならないのか、とか、どういう問題が発生するのか、とかが、大変よくわかります。
また、その間の鉄さんの心理状態も垣間見え、普通のマニュアル本ではわからないドナーの方の本音の部分がのぞけるのも興味深いところでした。
また、鉄さんを含め、ドナー経験者の皆さんたちが、「世のため人のためなんだから、何がなんでも登録しなくちゃダメ!」というスタンスではなく、「できる人がやりたい時にやる、ってくらいがちょうどいいでね?」というノリだったのも、まりんにとっては救いだったかな……。
まりんは、ドナー登録どころか、献血にも行ってないので、ほんと、肩身が狭いです。
昔は献血が好きでよく行っていたのですが(なんか、生きてるって感じがして好きだったの)、一時、抗生剤と縁の切れない時期があって、それからは、すっかり足が遠のいてしまいました。今も抗生剤のお世話になってるし(でも、随分回復~)、自分の面倒も見られないヤツなのに他人さまのお役に立つどころではないよなぁ……。
この本を買うと売り上げの4%は骨髄移植推進財団の寄付されるそうなので、とりあえず、今はそれで勘弁してください。
も少し元気になったら、また献血くらいはできるようになるかも(近くに献血ルームとかあればもっと行きやすいんだけど……)。

そういえば、この本、2ちゃんのスレが丸ごとそのまま本になっているのですが、なぜか縦書きで、妙に読みにくいです。
この本ばかりは、ネットの板と同じように横書きのほうがよかったな。
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by marine-umino | 2005-10-04 22:18 | 最近読んだ本

落日の剣







落日の剣―真実のアーサー王の物語
(上)若き戦士の物語 〈下〉王の苦悩と悲劇
ローズマリ サトクリフ Rosemary Sutcliff 山本 史郎 山本 泰子 / 原書房

最近、ローズマリー・サトクリフが、けっこう話題らしい。
以前、とあるハーブ研究家の方がハーブにまつわる物語として(主人公を想う少女が主人公にローズマリーの花を渡すシーンがあるのだ)紹介していらした『運命の騎士』を読みたくて探したときはどこにもなくて、県立図書館の書庫から司書の方に発掘(そんな大げさな)していただいたのだが、ここ数年のうちに何冊も新しい本が出版されていた。
いつのまにっっっ。
どうやら、近年になって歴史小説家としてのサトクリフの評価が上がったらしい。
ローズマリー・サトクリフは1920年生まれ、1992年没のイギリスの歴史小説家。
歴史を題材としたファンタジックな児童文学(たとえば『運命の騎士』のような)もたくさん発表しているそうなので、もしかしたら、子供のころ、学校の図書館で読んだという人もいるかもしれない(ちなみに、まりんの学校にはなかったと思う。少なくとも、まりんは読んだことがなかった)。
この『落日の剣』は、『真実のアーサー王の物語』という副題が示すとおり、アーサー王伝説のお話。
といっても、世間がよく知られているようなお話ではない。エクスカリバーはもちろん、ランスロットもマーリンもレディ・グウィネヴィアも出てこないのだ。
どうやら、ランスロットは時代がずっとずっと下がってからフランスあたりで創作されたキャラらしい(そうだったのか)。
アーサーにしても、紀元前五世紀ごろに活躍したといわれる『アルトス』と呼ばれる人がモデルだろうということくらいしかわかっていないそうだ。
ローズマリー・サトクリフは、わずかに残る歴史的資料を拾い集め、つなぎ合わせ、この小説を書いた。ストーリーの多くはローズマリー・サトクリフの卓越した想像力の産物だが、その想像力は歴史的事実にしっかりと根付いている、ということになる。
というわけで、あらすじ。

ストーリーは、主人公アルトスがブリテン王アンブロシウスから剣を授けられるシーンから始まる。アルトスの曽祖父・皇帝マクシムスの玉璽である紫水晶のはまった剣だ。
妻を娶らず、子も生さなかったアンブロシウスは、兄ウーゼルの子であるアルトスを我が子のようにかわいがっていたが、アルトスの母は身分が低く、妾腹であることから、アルトスがブリテン王を継承することは簡単なことではなかった。
アルトスは、自らアンブロシウスの家臣としてブリテン伯爵を名乗り、軍隊を率いてサクソン人の討伐へ向かうことを望むのだった。
アルトスの部下は、豪放磊落なケイ。太刀持ちのチビ助ことフラビアン。
やがて、修道院で医学を学んでいたグワルフマイ、吟遊詩人ベドウィルを仲間に加え、アルトスは海を越えて攻め込んでくるサクソン人と戦い続けるのだった。

って……。
あらすじ、こんだけか……。
いや、詳しく書くと、ほんとにいろいろあって大変なことになってしまうので、まあ、大まかなところだけ。
アルトスの妻となる女性も出てくる。
名前はグエンフマラ。アルトスが望んだわけではなく、なかば同盟のための政略結婚だった。
グエンフマラは、やがて、アルトスの部下であるベドウィルと恋に落ちる。
このあたりは、よく知られている、グウィネヴイアとランスロットのエピソードと同じ。
グエンフマラとベドウィルって、実は、ふたりとも、アルトスのことが好きっぽいんだよね。でも、グエンフマラはアルトスとはすれ違い(とある強烈な女性経験がトラウマになって、アルトスは少々女性恐怖症ぎみ。ここのあたりの経緯は複雑なので、とても一口では語れない)、ベドウィルは男同士。愛されないふたりが、それをよくわかった上で、お互いの傷を舐め合ってるって感がどうも否めない。
『落日の剣』にはゴールトとレヴィンというらぶらぶカップル(もちろん男同士。マジでらぶらぶ)も出てくるし、そういえば、前に読んだ『運命の騎士』のランダルとベービスも、あんたたち、ちょーっと、友情越えてやしないかい?、と言いたくなるようなふたりだった。
それに、アンブロシウスは生涯独身でアルトスを寵愛していたし、アクイラとも妙にわかり合っちゃってる感じだし、この人も、ちょっとソレっぽいと言えば言えなくもない。
もしかして、意外とローズマリー・サトクリフも腐女子体質だったのだろうか???(笑)
そうでなくても、若い男の子を魅力的に描くのが上手な人だと思う。
後年、アルトスの前に立ちふさがるサクソン人・ケルディックや、ケルディックと手を組みその存在自体でアルトスを苦しめるメドラウトの、強さ、猛々しさ、危うさ、狡猾さは、なかなか萌え。
こういうところは、やはり、女の人だなぁ、と思う。このカッコよさは、女の目から見たカッコよさで、男の人が思うカッコよさとは違う気がするから。
ほかには、なかなかさばけた性格のグエンフマラの弟ファリックや、フツーの人生をフツーに生きたフラビアンなんかもいい味出してる。アーサーを影で支える丘の民のドルイム・ドゥは、なんだか弥七みたいでカッコいい。
そして、何よりも美しいのは、古きよきイングランドの自然。
清水が流れ、草花が咲き乱れるその描写を読んでいたら、なんだか、イギリスに行きたくなった。ハドリアヌスの防壁や、りんごの島ことグラストンベリーを見てみたい。
ただ、冬のイギリスは勘弁だ。イギリスの冬があんなに厳しいとは知らなかった。
昔の人にとって、冬を越すのは、大げさでもなんでもなく、命がけだったんだなぁ。

なんにしても、ローズマリー・サトクリフのほかの本も読んでみたくなった。
ただ、この本、誤植がちょっと多いのよね。日本語としてどうよ、と言いたくなるような文章もところどころ見受けられる。改行も少なくてツラい。
原文に極力忠実に訳すのか、それとも、日本語として読みやすく多少脚色を加えるのか、そのあたりは、翻訳家さんとしても、迷われるところだとは思うけど、もう、少し、もう少しだけ、読みやすいとありがたかった。
また、文字間と行間とのバランスもよくない気がする。
ここのあたりも、出版社さま、ご一考、よろしくお願いしますです。
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by marine-umino | 2005-09-20 20:47 | 最近読んだ本

カタコンベ


神山 裕右 / 講談社

2004年 第50回江戸川乱歩賞受賞作
新潟のマイコミ平地下で大規模な鍾乳洞が発見された。
大学院で古生物学を研究している弥生は、その鍾乳洞で幻のニホンオオカミらしい動物が生息しているらしいという噂を聞き、研究室の助教授、柳原と共にその鍾乳洞の調査に参加する。マイコミ平は、その昔、ケイブダイバーであった弥生の父が行方不明となった場所でもあった。何か因縁めいたものを感じながら調査にあたる弥生だったが、折りしもの悪天候により、洞窟は水没の危機にさらされる。
そのころ、弥生たちの危険を知って、ひとり、洞窟へと救出に向かう男がいた。男の名前は東馬亮。東馬は、かつて、このマイコミ平で弥生の父を見殺しにしたという過去を持っていた……。

新聞の書評に、ケイビング(つまり、洞窟探検ね)の経験がない作者が書いているとは思えない臨場感、みたいなことが書いてあって、それを見て、読んでみたいと思っていた一冊でした。
洞窟探検。なんだか、それだけでドキドキします。地球上にも、人類の知らないナゾがまだまだたくさんあるんだって思い出させてくれる言葉です。
というわけで、洞窟探検、ドキドキしました。
確かに、ドキドキしたのですが……。
あー……。
なんというか、それ以外の部分は、大変粗い印象の一冊でもありました。
まず、文章が粗い。
文章と文章のつなぎに困った場所だったのか、周囲と比べて明らかに粗雑な一文がところどころ目立ちます。
中には、短い一文の中に同じ単語が繰り返されている箇所などあって、こういうところは、普通だったら、編集さんや校正さんから確実に指摘が入るはず。
もしかしたら、江戸川乱歩賞は投稿作に手を入れないで(明らかな誤字脱字は別としても)そのまま本にしているのかなぁ、なんて思ってしまいました(実際はどうなの? ただの校正ミス?)。
また、ストーリー構成も粗い。
細かい部分での描写で「あれ?」と思わせるような、よく意味のわからない部分があるのは、まあ、許すとしても、これでは犯人の動機があまりにも弱いでしょ。
ここは、もう少し、知恵を絞ってほしいというか、絞らなきゃならない部分だったと思います。
一番気になるのが、とにかく、登場人物が多く、視点がころころ変わるのが読みにくいこと。もちろん、視点が変わってもうまく処理していらっしゃる作家さんもいらっしゃるので、結局は、その登場人物をうまくさばけていないということなのかもしれません。
東馬、霧崎あたり、せっかくカッコいいキャラなのに、そのカッコよさが今一つ生きてこないのは、視点がバラけたせいもあるでしょう。
プロローグの遭難のシーンとか、救助隊の人や刑事さんの登場シーンは削り、せいぜい、弥生と東馬の視点に絞って、なるべく洞窟内の出来事でストーリーを進めていくようにしたら、もっと、すっきりとしただろうし、ケイビングのわくわく感というこのお話の一番の魅力を生かせたのではないでしょうか。
時折はさまれる、顔の見えない犯人の思わせぶりな描写も邪魔。
たぶん、こういう構成って、小説というよりは、映画や二時間ドラマのスタイルなのではないかという気がします。
映画やドラマでこういう構成が効果的なのは、画像があるから。ヴィジュアルは文章では真似のできないほどの大量のイメージ・データを一瞬のうちに伝えることができます。
情報量は少ないけれど、その分、ピンポイントで明確な情報を伝えることができるのが文章。この作品の場合では、逆に、読者に与える情報量を絞り、「この先、どうなるんだろう?」と読者をドキドキさせたほうがよかったのでは??? 文章でしか読者に与えることができない面白さ、楽しさ、を、もう少し味わわせてもらいたい気もしました。
うーん。『最年少受賞』なんていう話題性がないとやっていけないところまで江戸川乱歩賞もきちゃってるのかな、なんて気もしないのではないのですが……、これは意地悪過ぎる見方ですかね。
洞窟でのパニック・シーンはドキドキできますし、東馬と霧崎をもう少しカッコよく描くことができたら(魅力的なヒーローはエンターティンメントには不可欠)、もっと、もっと、楽しめる一冊になっていたんじゃないかと思います。
そういう意味で、かなり惜しい一冊でした。
お若い作者さんですし、次回作、がんばってほしいです。
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by marine-umino | 2005-09-16 16:46 | 最近読んだ本

魔女は夜ささやく(上)(下)







ロバート・R・マキャモン 二宮 磬 / 文藝春秋

とにかく、疲れた……。
メンタルもフィジカルも……。
とにかく、自分をリセットしなくっちゃ。
こんな時は、読書がいちばん。
というわけで、図書館に行ってみました。
図書館の雰囲気は好きです。ぼーっとしながら本の背表紙をだらだらと見ながら、ふと気になった本を手に取ってみるのが、まりん的図書館の楽しみ。そんな時は、まりんがその本を選んだというよりは、書棚の中からその本のほうがまりんを呼んでいるという心地がするものです。
この本も、まりんを呼んだ一冊……。

タイトルのとおり、魔女狩りのお話。
時は1699年。場所は南部アメリカ。
ファウント・ロイヤルという新興の町で、魔女が現れ、その魔女の裁判のために隣町のチャールズ・タウンからやってくるのですが、この判事の書記・マシュー(二十歳)が本編の主人公です。
マシューは幼いころに両親と死に別れ、孤児院で育ちました。しかし、たいそう頭がよかったため、判事の書記となることができたのです。
ファウント・ロイヤルに着いた判事・ウッドワードとマシューは、レイチェル・ハワースがなぜ『魔女』と呼ばれることとなったのか調査を始めました。
レイチェルは悪魔と交わり、悪魔に示唆されるがまま、町の司祭と、自分の夫を殺したとされ、牢に幽閉されています。
人々の証言はどれもレイチェルがまちがいなく魔女であることを裏付けるようなものばかり。
しかし、マシューは、その証言を聞きながら、一つの疑いをいだくに至るのです。
もしかしたら、レイチェルは魔女ではないのではないか? 司祭とレイチェルの夫を殺した誰かが、レイチェルに罪をかぶせようとしているのではないか……。
そんな時、また新たな事件が起こり……。

という感じで、マシューが真犯人を探し出していく筋立てとなっておりまして、ホラーというよりはミステリー仕立てのお話です。
ファウント・ロイヤルの住人はいずれも個性派ぞろい。
最初はどの人も怪しく見えてきますが、次第に住人の過去が暴かれ、最後にちゃんと犯人にどりつく筋書きはなかなか楽しめました。
その傍らで、無実の女性に『魔女』との汚名を着せ、彼女を追い詰めていく町の人たちの無意識の悪意がけっこうおそろしいです。
もちろん、それがいけないことだとわかっている人たちもいるのですが、そういう人たちは真実を口にすることによって蒙るであろう自身の被害を思い、みな、町を出て行ってしまう。
レイチェルの味方はどこにもいません。
こういった、いわゆるいじめの構図がうまく描かれていて、「うわーっ」と脅かされることはなくても、じわじわと真綿で首を絞められるような息苦しい恐怖が伝わってきます。こういうところは、やはり、ホラー作家だなぁ、と思わされました。
こう書くと怖いお話なのかなと思われてしまうかもしれませんが、マシューの手によって事件はきれいに解決されていきますし、読後感はさわやかです。
魔女と言われたレイチェルの潔さも、判事・ウッドワードとマシューの、親子にも似ていながら、そうとは割り切れない複雑な関係も見所の一つ。
ファウント・ロイヤルの創設者・ビドウェルは、ごうつくばりですが、それでいて、けっこうたくましいし、また、ビドウェルの家の家政婦・ネトルズ夫人の強いこと!(笑)
訳も読みやすくて、二段組上下二冊の長編でも、さほど苦労することなく一気に読めました。
ヴィジュアルに訴える部分の多いお話でしたし、映画で見たい気もします。
それにしても……。
1700年ごろのアメリカって(いや、アメリカだけじゃないだろうが)、すんごい不潔だったんだなぁ。
悪臭漂う描写が多くて、そこのところは、ちょっと閉口しちゃいましたよ(苦笑)。ネズミにかじられる等、グログロなシーンも多いです。
やっぱり、繊細な神経の方にはおすすめできない一作かも……。
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by marine-umino | 2005-09-12 18:58 | 最近読んだ本

今週のD・Gray-man

4巻、まだ買ってません(涙)。
なんで、あたし、こんなにぼやぼやさんなのか???
おまけに、今月出るノベルズは、なんと! 神田くんの話らしい。てゆーか。神田くんの胸の包帯の謎が解けるらしい(いつも巻いているのかと思ったけど、期間限定だったらしい)。読まねば。

で、今週のDグレ。な、なんとか、読んだ~。

今週のマイ・フェイバリット(英語で書けよ)一こまは、仮眠を取るコムイ室長。
う~ん。愛らし~い♪

相変わらずの健啖家ぶりを冒頭から見せるアレンくん。きっと、追加注文させられた旨印の肉まんは、全部アレンくんが完食したに違いありません(それまで何個食べたのかはナゾ)。
そして、ついにクロス元帥発見か?
と思われたのに、クロス元帥、遭難?
まあ、殺しても死なない人だそうだから、きっと、死んでないんでしょうけどね。妓楼(要するに遊郭みたいなもんか?)の女主人はクロス元帥は死んだのではないかと思っていたようですが、アレンくんは信じて疑ってもいないみたい。あたしも信じてない。だって、ここで死なれたら話にならない(笑)。
それにしても、次の舞台は日本か。しかも、江戸って……。
いったい、いつの時代のどんな江戸なのか???
ほんとに江戸時代の江戸だったら、よほど末期じゃないと鎖国してて入国できないよ。
でも、アレンくんがあそこには行きたくなかったと言ってるとこみると、もしかして、昔、いたことがあるってことでしょうかね? それとも別の理由によるものかしらん???
来週も楽しみさ♪
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by marine-umino | 2005-05-16 23:41 | 最近読んだ本

はじめの一歩 【71】

はじめの一歩 71 (71)
森川 ジョージ / 講談社
ISBN : 4063634582




今回は、王子宮田のOPBF防衛戦を丸ごと+鷹村さんのミドル級タイトルマッチの前座での木村さんvsエレキ・バッテリ再戦の途中まで。
次号、木村さんのドラゴン・フィッシュ・ブロー炸裂か?
(って、週マガ読んでたらわかるけど)

発売とほぼ同時に買っていたのですが、なかなか読んでいるひまがなくて……(涙)。
それでも、未読のまま積んである本の中から最初にこれを選んだのは、やっぱり、スポ根は、つるっ、と楽に読めちゃうからですかねぇ???
何はともあれ、王子、防衛おめでとう♪
なのですが……。
試合内容は、王子的にも、読者的にも、ちょっと不本意?
格下相手に乱打戦やったあげく、拳骨折とは……。
これで一歩との試合も流れちゃったし、肩透かしな気分を味わった人も多かったかも。
おまけに、ミスター・サカグチが連れてきたフィリピン人ボクサー。
なんか因縁ありそうな人です。
どうやら、宮田父の最後の試合がらみの人みたいだし(宮田父のボクサー生命を奪った人の、息子、もしくは、弟か???)、正体がわかったら、王子は一歩よりもこっちを優先させちゃいそう。
やっぱ、王子と一歩は縁ないのかしらん???
かわいそうな一歩くん。あんなに王子のこと、好きなのにー(でも、あたしは、鷹村×王子だと思うけど)。
あとねー、あとねー。
例のフィリピン人ボクサーの人が、ロッカールーム前で王子に話しかけるシーン。
「この出会いは運命だと言っただろ? 運命には誰も逆らえないぜ」
っていう台詞も、絵ヅラも、なんだかっぽくて、ちょっと腐女子萌え♪

……すみません……。

まあ、宮田×幕之内戦は流れてしまったものの、間柴×沢村戦も決まったことですし(本誌では始まりましたね)、しばらくはこれを楽しみにしましょう。
血で血を洗う死闘確実ですが、ここは、やっぱ、間柴兄に勝ってもらって、ババーン、と景気よく世界に行ってもらいたい。
なぜかって?
もちろん、それは、世界に行けば、きっと、ヴォルグ・ザンギエフが出てくるに違いないから♪
ヴォルグ×間柴戦って、見てみたくないですか?
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by marine-umino | 2005-01-14 23:29 | 最近読んだ本

黄泉がえり

黄泉がえり
梶尾 真治 / 新潮社
ISBN : 410149004X



文庫版

黄泉がえり
梶尾 真治 / 新潮社
ISBN : 410440201X




で、こっちがハードカバー
(なんで、こういう表紙なのかと思ったけど、本文読んだら理由がわかりました。赤と黒ね。なるほど)

それは宇宙空間を漂っていた。ただ、蓄えたエネルギーを吐き出し、宇宙を漂流し、エネルギーがなくなったら、また、エネルギーを蓄える。それだけの存在だった。
いつものように、宇宙を漂流しエネルギーを使い果たしたそれは、いつものようにエネルギーを得るべく、ある一つの惑星に降り立った。
ただ、一つ、いつもと違っていたのは、その惑星には、惑星の上を自由に動き回る無数の生命体が存在していたこと。
それは、その生命体に興味をいだき始める。
時を同じくして、それの降り立った場所……熊本で、死んだはずの人間が次々と生き返るという現象が起きて……。

今さらっス。今さら過ぎるっス。
ごめんなさい。梶尾さん。
作者プロフィールに『寡作』などと書かれる梶尾さんの本すら、まともに追いきれないあたしって……(涙)。
いやね、一応、映画は見たんですよ。それも公開初日にまりんママと一緒に(で、翌日、ママが入院して、あげく手術した。忘れられない思い出です……)。
クサナギくんもなかなかいい味出してたし、それなりにロマンティックな仕上がりの映画でした。
観客動員数もけっこうなものだと聞いていたので、これでカジシンさんも、ほんとのメジャーね、SF会というちょこっと(ちょこっとか?)マイナーなジャンルでは、既にスーパー・メジャーと言っていいカジシンさんだったけど、これで、より多くの皆さんの知るところになるのね、とカジシンファンとしては、うれしいような淋しいような、ちょっと複雑な気持ちを味わっていたのですが……。
でも、思ったより、梶尾さん自身が騒がれることなかったね(ううっ。ごめんなさい)。
なんでかなぁ、と思ってたんだけど、原作読んで理由がちょっとわかったかも……。
映画はロマンティックな恋愛ドラマに仕上がってました。トリックもうまく使ってあったし(まりん、ちっとも気づかなかったよ)、黄泉がえってきた人たちの描写もわかりやすかった。これは映像の勝利ってヤツでしょう。
いろいろと説明不足で腑に落ちないところはあったものの、せつなさを楽しめる一作だったと思います。
梶尾さんは、こういうお話も書かれる人なので、まりんは、ずっと、原作もそうなんだろうと思っていたんだけど……。
全然違うじゃん。
映画は、死んだ人が生き返るっていうアイディアと、熊本っていう土地柄を利用して、原作を再構築したようなお話でした。
原作は、映画から想像していたのより、ずっと、ずっと、SFなんだよね。
テーマは、むしろ、異文明との遭遇っていう、SFでは普遍的なものであったような気がします。
あー、これだと、映画見て原作買った人は、ちょっと違うって思っちゃうかなぁ。
そういう人が期待したような恋愛ドラマじゃないもん。
まりん的には、思ってたよりSFで、映画ではわかんなかったところもちゃんと説明してあったので、さすがカジシンさんと思ったんだけど。
ま、映画は映画、原作は原作。別物だと割り切るのがいいかと思います。
大変読みやすいですし、梶尾さんらしい、やわらかな叙情感あふれる一冊です。
読んだあと、ちょっとだけ人にやさしくなれそうな自分を発見できるかも。
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by marine-umino | 2004-11-14 23:01 | 最近読んだ本



   まいにちぼちぼち
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